あっきーです。
今回の投稿では『観光ARG』を観光の観点から紹介します。
■観光に求められる非日常性
そもそも観光という概念は
時代や地域によって異なるため、明確な定義はされていないようです。
ここでは、観光を成立させる要件についてのみ記載します。
【*1】
①観光は、労働に対する余暇の誕生と拡大が前提であり、近代以降の経済社会特有の現象である
(近代以前の巡礼等は、観光ではない)
②観光は、定住者が行う行為である(定住先を持たない放浪の旅は観光ではない)
③観光には、他郷への意図的離郷が伴う(ほぼ計画された往復の道程と目的地がある)
④観光のために離郷する期間は、相対的に短く、一時的なものである
(日常の断絶を一時的に行うことに意味がある)
⑤観光は「観る」行為が中心となる(買い物、食事等は付随的なものである)
⑥観光は、対象を消費する行為である(移動、食事、宿泊、観光対象の見物等の行為は、対価を支払う)
⑦観光は、軽快であることが条件
(重装備、相当の体力、厖大な資金等を要するものは、もはや観光の範疇を超えている)
⑧観光は、快楽を期待して行われる行為である
(視覚の快楽、慰安、知見の深化・増大、気分転換、開放感、精神の昂揚と安らぎなどを目的とする)
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観光地は、観光者のまなざしによって出現する空間である。
観光者は、自分の定住地を一時的に離れて他郷におもむき、
その地にある、観光者にとっては非日常的な風物を観ることにより、
快楽や安らぎ、解放感などを得て、再び自分の定住地に戻るのである。
観光には三つの立場があります。
それは、観光者・プロデューサー・地域住民です。
観光は、特に「観光者にとって」非日常的な風物を観る行為です。
観光者が観る非日常的な風物には二つの考え方があります。
【*1】
1つは神社仏閣、滝などのいわゆる名所としての風景(観光景)であり、
もう1つは、街並みなどの日常生活を中心とする風景(日常景)である。
我が国では、「歌枕」の伝統も手伝って、日本三景に代表される、
いわゆる景勝地なども含む観光景が、もっぱら観光の対象とされ、
後者は近年に至るまでほとんど注目されてこなかった。
たしかに、いわゆる景勝地は、「比較絶対的な卓越性を持つ非日常」であり、
後者は、「日常景」という言葉通り、本来的な意味での絶対的な非日常性ではなく、
観光客にとっての相対的な差異に基づく非日常性(その地域の者にとっては文字通り日常的風景)である。
地域住民にとって非日常性のある空間は
もちろん観光者にとっても非日常性の高い空間となります。
従来の観光は、こうした「観光景」を求めて観光者が訪れるという形態が主でした。
それに対して
今回僕たちが提供しようと考えている観光ARGは、
後者の「日常景」における「非日常空間」の演出が要点となります。
それは例えば下北沢という地域で、地域住民が自然に生活する空間において
ストーリー・ギミック・コミュニケーションという要素を持つARGを展開することで
ただ下北沢に訪れただけでは得られない体験、
地域住民との交流やごっこ遊びの感覚、また物語性を観光者に提供することを意味します。
多くの観光者を誘致できる「観光景」を持つ地域は限られています。
その中で、ARGによるこうしたソフトとしての非日常性の創出は
観光資源に恵まれない地域においても応用できるのではないかと期待しています。
【参考】
*1 観光立国と地域活性化をめぐって 萩原愛一
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200909_704/070401.pdf
*2 観光概念の再構成 加太宏邦
http://rose.lib.hosei.ac.jp/dspace/bitstream/10114/1563/1/54-4kabuto.pdf
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