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【事例紹介】AUDI A3プロモーションARG




今日はtwitterでも宣言した通り(笑
http://twitter.com/KegARG2009/status/6224722612


商品広告型ARGの代表作である、
the art of the heistの事例を簡単にご紹介したいと思います。
(スライドイメージは、去年のARGコンソーシアムで
ularatterが使用したものです。ゼミ入ったばかりの頃だ、懐かしい)


<基本情報>
■目的
Audi A3のプロモーション
http://www.audi.co.jp/audi/jp/jp2/new_cars/a3.html(A3の詳細ページ)
2005年当時の最新モデル。
ハイテク機能搭載型で予想よりも価格が上がってしまった事から、
他社でも失敗の相次いでいたモデルだった為、
Audiの広告代理店のMckinneyがcampfireにアイディアを依頼した事からうまれました。



■ターゲット
超富裕層(年収15万ドル以上)、流行に敏感な人、ハイテクに精通した人、ウェブにはまっていてアクティブな若者(25歳̶34歳)(Campfire, no date)

■期間 90日間

■使用されたメディア
テレビ、新聞、屋外、通勤電車、雑誌、ウェブサイト、ブログ、ライブイベント、電子メール、ポッドキャスト、映画、オンライン広告、ラジオ、屋外の張り紙 等


<The Art of the Heist概要>
設定はいかにもアメリカ。(笑
謎の窃盗団に盗まれたAudiA3を巡って、
主人公の女性ニーシャ、
そしてその恋人のイアンと、
参加者が協力しあって謎を解明していくというアクションスパイムービー調のストーリー設定。
窃盗団の黒幕は果たして誰なのか?
当初見方と思われていたゲームデザイナー、バージルは一体何者…?
主人公のニーシャはトゥームレイダー顔負けのアクションと
ちょっと妖艶なコスチュームに身を包み、
窃盗団を追います。





そもそもがA3の販促目的なので、
A3のハイテク機能も旨くストーリー設定内に組み込まれていました。
例えばSDcardが搭載出来るのが一つの売りだったのですが、
ARG期間中全米各地に設置された6台のA3に搭載されたSDcardには、
ストーリー上大変重要な役割を担っていた『史上最大のアート窃盗計画』が暗号化されて記憶されており、
ニューヨークで盗まれた1台には、暗号を解く鍵が隠されている、
という設定に。
個人的に結構好きな設定です。

そして参加者は、
ストーリー中のキャラクターと共にSDcard奪還ミッションに取り組んだりすることで、ストーリー進行に関わります。


ストーリーはウェブ映画としても楽しめるようなクオリティーとなっており、
キャンペーン中はストーリー進行と一貫したメディア戦略がとられていました。

<プレイヤー行動>
プレイヤーといっても何層かに分けられるのですが、
今回は簡単に参加する人しない人で。

■映画感覚で楽しむ人の場合(オーディエンス)
まとめ情報サイト(StolenA3.com)で進行情報や動画を取得してストーリーを楽しむ。
・StolenA3は、
todd(企画者サイドの人間)がブログ形式で運営していたまとめ系サイトで、
フォーラム(参加者同士が互いに情報交換などで交流できる場)の役割も一部果たしていたもの。
公式扱いされており、ストーリー進行をコントロールする機能があったと思われます。

■実際に参加して楽しむ人の場合
まとめ情報サイト(StolenA3.com)で進行情報や動画を取得。

盗まれたA3に搭載されたSDcard捜索の為の謎を解く為に、
まとめサイトの情報だけでなく、その他の関連サイト 
ex) LastResortRetrieval.com、virgilkingofcode.com、
Monster.com、Audi公式サイト、http://forums.unfiction.com/(ARG総合フォーラム)等
にアクセスし、謎を解くヒントや暗号を探し出して、
フォーラム等の交流サイトにて意見交換、暗号解読、等を行います。



(より積極的にイベントに参加する場合)
①キャラクターから実際にミッションを伝えられ、参加する。(暗号を解き、ランダムに選ばれた人間)
ex)SDcard奪還ミッション、ニーシャと一緒にボートにのるミッション等
②パーティーなどのイベントに参加する。もしくは招待される。
ex)SONY主催のE3、バージル主催のロスでのラストイベント

動画公開

これによって、
まるで自分が本当にそのストーリーの中に存在しているかのような没入感を味わえたのではないかなぁと。
私がロストリング(マクドナルド×北京オリンピックのARG)で、
ある動画の一部に出てるのですが(音声)
動画撮影時は「なんだこれ。。」と思っていたにも関わらず、
撮影した動画がいざ公式にアップされると、
なんだかちょっとテンション上がった経験があります。



<ラビットホール>
ラビットホールとはARGの設計において、
プレイヤーを日常世界からゲームの架空世界へと誘う巧妙な入り口のことです。
「これがゲームの入り口だよ」というメタコミュニケーションは一切行われず、
その存在に気づいた者に「これはいったい何だろう?」、
「ひょっとしたら何かが隠されているかもしれない」という推測をさせ、
ゲーム世界へと自発的に引き入れて行く『タッチポイント』です。
「不思議な国のアリス」において、うさぎ(rabbit)がアリスを不思議な世界へ引き込んだ穴(hole)にちなんで命名されました。




■キャンペーンスタート前
・キャラクター達のサイト公開(現在は非公開)
・ドイツでA3関連事件が起こったという動画が公開
・ブログや新聞の広告欄に、キャラークターのサイトであるLastResortRetrievalの広告が記載される
・ARGnetでの関連記事が公開

■キャンペーン中
街頭広告、CM、ラジオ
ネット上の広告
AUDI公式サイトの広告
実際のリアルイベント
(※2 SONYのE3など)

この事例はかなりTINAG
this is not a game が尊重された例だと思います。
求人広告を実際にのせちゃうとか、
かなりぶっ飛んでますが、ここまでしちゃったのがこの事例ですね。
WIREDとかにものせてるので、
結構お金かかったんじゃないかなぁと思います。。

ちなみにこれが実際の動画。


<メディア戦略と代表的リアルイベント>
最後に、
時系列で実際どんなメディア戦略、
あるいはイベントがおこなわれてきたのかスライドショーでご覧下さい。
(すいません、編集がやや大変ですw)





























そしてラストイベント。




まぁ





どう見てもお金かかりまくってますよね!!!!!!笑



ってことで、
とある情報ソースによると、

"Audi is not a fear-based brand," says Stephen Berkov, the director of advertising. He compares a campaign like "Art of the Heist" to a jet engine turned on its end, "sucking people into the intake." Although he declined to disclose his ad budget for launching the A3, it probably totals $15 million to $20 million, of which about $3 million to $4 million will go to "Heist." Audi will dedicate the rest to traditional TV and print buys.

。。。

ad budget for launching the A3, it probably totals $15 million to $20 million, of which about $3 million to $4 million will go to "Heist."



A3トータル予想広告費
$15 million to $20 million

THE ART OF THE HEIST 予想制作費
$3 million to $4 million

映画の広告費ばりに予算あって、
びっくりですね。(笑
いや、まぁあれだけ屋外広告やって、
テレビCMもばんばん流し、
必要もない偽求人広告を雑誌に流し、
さらにフルタイムでリスク管理の為に弁護士までやとって、
24時間の運営チームを組んでたら、
これくらいかかるのもうなずける、といったところでしょうか。

で、効果はどうだったかというと、
一応記事の最後に貼付けますが、
あまり信憑性が無い上に、正直短期的な売上には直結していません。
それに、必ずしも全てのオーディエンスがこの手法を気に入るとも限らない。
あるプレーヤーはキャンペーンの一部始終に大興奮し満足したが、
あるプレーヤーはこんなのは終わってるマーケティングの歴史の中でも最悪なアイディアだ、詐欺だ、
とののしったコメントをArgn.comに投稿したそうです。
そもそもリーチという意味では課題のあるARGで、当然売上げが急に右肩上がりになるとは思えない。


ただ、以下の様に言っている様に、


"Nonetheless, even if the early gamers drawn into "Heist" don't buy a car this year, Cude says, Audi believes in the importance of letting prospective customers know that the company is doing something cool and highly advanced -- not the same old ad campaign. "

別に、ゲームやったユーザーが車を買うかなんてある種どうでも良いというか。
ポイントはそこじゃないんですね。
AUDIは他とは違う。
古くさい今までの広告じゃない、
クールで最高に新しい事をやってのけるブランドなんだ、という
そういうコミュニケーションを誰よりもラディカルにドラスティックにやったのが彼らだったんだと思います。

"Absolute truth in advertising, it seems, does not always make for the most effective strategy. "
広告の絶対的な真実と呼ばれる物は、常に最も効果的な戦略であるとは限らない様にみえる。


私は広告にそんなに強いわけではないですが、
不思議と、こんな言葉がしっくりきた事例でした。
実際この事例を調べて以来、
教授が乗ってるAUDIに対するイメージはかなり変わった事は言うまでもありません。

バズマーケティングとしてのARG。
以下にいくつかバズマーケについての引用を集めたのですが、

Experts in so-called "buzz marketing," designed to create word of mouth, say campaigns like Audi's "Art of the Heist" represent the future and can surpass traditional ads in regard to maintaining consumer brand-interest.

"If I can involve one person really deeply in my brand in 50 cities, vs. 50 people in one city, I'll take the former every time," says Mark Hughes, author of Buzzmarketing:

Get People to Talk About Your Stuff (Portfolio, 2005).

プロモーションにおけるARGはまさに、バズ、
人と人との「会話」を作る手法なんだなぁと思いました。



Jon Berry of research company Nop World, and author of The Influentials (Free Press, 2004), argues that word of mouth is worth more than twice what it was in the 1970s in affecting consumer purchases, and it's 150% more influential than newspaper and magazine advertising or articles.


これからいよいよ経営難に陥るだろうと言われるマスメディア、
そして広告。
the art of the heist は一つ、
新しい広告の形を提起した
今見ても面白い、代表例だと思います。



ーーーーーーーーーー


<数値データ>
■参加者数関連
・AudiUSA.com訪問者数:200万人(Campfire, no date)
・ゲーム参加者:50万人 (McKinney-Silver, 2005)
・1日に20万人以上が盗まれたA3の捜索に参加(bill, 2005; bouquet et al, 2005)
 22日目までの時点で、20万3千人がStolenA3.comに。平均滞在時間は5分間(McKinney-Silver,
 2005)
・5月9日までの時点で、12万5千人が定期的にウェブサイトをチェック。
 広告効果は3-4百万ドル(Kiley, 2005)

■広告効果関連
・ウェブサイト上での購入を示唆する動きは前回のマーケティング実施時より73%の増加(Clark, 2005)
・ディーラー訪問者数:1万人(McKinney-Silver, 2005)
・試乗数:4000以上 (McKinney-Silver, 2005)
・販売台数:1025車(Campfire, no date)
※どれくらいの期間でのデータなのかは不明です。
・ネット広告(インプレッション数)の表示回数:4千500万 (McKinney-Silver,2005)
・ウェブ広告により9万1千人の参加者が生まれる。そのうち31%が実際に購入を示唆。
 Audiのウェブ広告史上最も効果的な手法と評される(McKinney-Silver, 2005)
・60日目までの時点でAudiUSA.comへの2万人のユニークビジター。これは平均の5倍。
(ユニークビジターとはウェブ訪問者数の重複を除いて算出した人数)また、1万6千 件のA3購入を示唆する質問が寄せられる、これには13,363件の簡単な見積もり請求も含まれる(McKinney-Silver, 2005)

<受賞AWARD>
Gold for New Product Launch, IAB/AdWeek Mixx Conference, 2005
Gold for Online Integration, IAB/AdWeek Mixx Conference, 2005
Silver for Viral/Word of Mouth, IAB/AdWeek Mixx Conference, 2005
Best in Show award, IAB/AdWeek Mixx Conference, 2005

▼MIXX awardsについて
→MIXX Awardsとは、有力なブランドマーケーターや主要なメディア企業の幹部、また世界で最も力のある数々のブランドのキャンペーン等を手がける広告のエキスパートなどによって公開審査される、インタラクティブな広告賞
http://www.mixx-expo.com/2.8/default_awards.2008-06-20.aspx


<制作者>
Mckinney http://www.mckinney.com
Campfire http://campfirenyc.com
その他関係スタッフ:(以下urlをご参照ください)
http://www.haxan.com/2005/07/27/the-art-of-the-heist-credits/







<その他 References>
●Mckinneyによるまとめサイト
http://microsites.audiusa.com/a3/heist/default.htm

●Campfireの公式サイトに掲載されているまとめ記事
http://campfirenyc.com/category/case-studies/?id=3

●Unfiction(ARG総合フォーラムサイト)のThe Art of The Heistページ
http://forums.unfiction.com/forums/index.php?f=198

●ARGnet
http://www.argn.com/
“The Art of the H3ist Wrap-up and Review”
http://www.argn.com/archive/000285the_art_of_the_h3ist_wrap-up_and_review.php
"The Art of the Heist" Becomes Reality”
http://www.argn.com/archive/000227the_art_of_the_heist_becomes_reality.html
“The Art Of The Heist: Atlanta Update”
http://www.argn.com/archive/000240the_art_of_the_heist_atlanta_update.php

●iMediaでの掲載記事
http://www.imediaconnection.com/content/6386.asp

●Audi Worldにての掲載記事
http://www.audiworld.com/news/05/060805/content.shtml


【インタビュー動画】
かなり良いです!英語が分かる方は是非。
The True Brand of Advertising Pt. 1/4







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